誰もいない家

 久々のあひるカフェ。セリフ力の鍛錬……なのかな!?
 今回タイトルメーカーから拾ったお題は「誰もいない一日」です。のっけから「一日」を置き去りにして「誰もいない」って事だけ頭に入れて筋を作ったので、後でびっくりしました(?)。最後にちょっとでも「一日」を入れようかと思って(いい加減すぎるやろ)追加した一文が、思いのほか深みを持たせてくれて、いい加減も時にはマジカルパワーを発揮するなーと思いました(いい加減にしたのに、だから、マジカルなのか)。タイトルメーカーとはなんぞやと思われた方はこちらの記事をみてみてください。 タイトルメーカー - 月刊ウマナリ・よみもの部

 今回、おチビちゃま視点でかきましたので、エッセイじゃないです。

ここから、本文です。

  誰もいない家

 久しぶりに家に帰ると、家の中は静まり返っていた。シンとして、「シン」という音が聞こえるみたい。誰もいない。確かに、誰もいない。分かってるけど、百パーセントとは言えないから、俺は家の中を偵察してまわった。
 生まれた時から住んでいる家だけど、だぁれもいない家は初めてかもしれない。おかーさんもいないなんて。思えば俺、ひとりで留守番したことなかった。家にいる時、おかーさんかおねーちゃんがいつも、一緒にいた。
 おとーさんはたいてい家にいないけど、クソじじいなので、構わない。たいてい家にいない親父というと、仕事人間って思われるかもしれないけど、あのクソじじいは家にいない口実に仕事を使っていたから、仕事人間とは言えないと、俺は思う。
 俺が中学生になって、クソじじいのクソぶりは増大していったので、俺も、あんまり家にいない人になってしまった。
 俺はおかーさんが好きだし、おかーさんも俺が家にいないと寂しいのだと言うけれど、「この家は俺が建てた俺の家だ」とクソじじいが言い張る限り、俺はどうしてもという時以外帰らないことにした。
 今日は、そのどうしてもってことがあったから家に帰った。気まぐれでクソじじいが家にいたらってちょっとドキドキしたけど……いや、いつでも戦闘モードにはいれるようココロが準備していたけど、ちょっと、拍子抜け。
 誰もいなそうな家をうろついてみたけど、本当に誰もいなかった。
 もう一周、家を見回ることにする。
 開けたことのない、階段下の納戸をあける。ここはおかーさんとおねーちゃんしか開け閉めしないんじゃないだろうか。トイレットペーパーとか、ティッシュペーパーとか、洗剤とか、そういうのが兵隊みたいに並んでる。出番待ちの兵隊。兵隊のくせに、ちょっといい匂いがする。蝶番のところにおかーさんが立って、優しそうな顔をして、兵隊を数えている、そんな気配がした。この納戸には小さいおかーさんがいる。
 風呂場へいってみると、ひんやりして、蛇口とかシャワーとかあるくせに、カラッとしていた。冬に風呂場の小さい窓が開いているのを、俺は初めて見た。思えば、俺は家で風呂掃除ってものをしたことがないな。家出同然の俺が世話になってる先輩の家では、しょっちゅう風呂掃除してる。だから、冬にも風呂場の窓が開いているのは風呂掃除の名残だって、知ってる。小さな窓の、窓枠に小さなおかーさんがまた立ってた。湯船の汚れが残ってないかチェックしているのかもしれない。
 家じゅう見回ると、俺の記憶の片隅にひっかかってる色んな事実が、今この家の中にしっかり存在してることが次々判明していった。そして、その場所場所に、小さなおかーさんがいた。
 庭にでると、マンサクの木の前に、ほんものじゃないけどほんものと同じサイズのおかーさんが立ってた。ちくしょう、今日はおかーさんに用事があって帰ったワケじゃないのに、おかーさんが帰ってくるまで待たなきゃって気になってきた。ちょっとでも話をして、それからじゃないと出てゆけない。
 空を睨んでからマンサクの前のおかーさんをもう一度みると、そばにおとーさんが立っていた。もちろん、ほんものじゃない。なんでこういう時にでてくるんだろうクソじじい。いやがらせか?
 俺はおとーさんの気持ちがわからない。おとーさんが何で俺を嫌いなのかわからない。チビだから?後2年もしたらおとーさんの背丈を抜かすかもしれないのに。あんまり、期待もてないけど。
 おとーさんが俺を嫌う理由を一通り想像してみたけど、やっぱり「これか!」と思えるものはなくて、いつも通りあきらめる。でも、マンサクの前でおかーさんの隣に立つおとーさんを見ると、本当はおとーさんは俺を嫌っているワケじゃなくて、別の理由でいつもケンカを売ってくるのかもしれないと、ふと思う。思うけど、その別な理由もわからないから、俺はあきらめる。
 ちゅうがくさんねんせい。
 後何年かしたら、分かるのかもしれない。
 とりあえず、用事を済ませるため、俺は家の中へ戻った。多分一日、家にいる。